第8回黒船賞情報(1)

 第8回を迎える黒船賞、今年のキャッチコピーは「いでよ赤兎馬」だ。
説明するまでもなく、この赤兎馬というのは第1回の優勝馬リバーセキトバを示しているのだが、地元馬の優勝で幕を開けた黒船賞の感動の原点に立ち返ろうという意図が秘められている。
 スタンドが歓喜に揺れたあの第1回以降も黒船賞は純粋なる競馬の魅力をストレートに四国のファンに提供し続けてきた。第2回はテセウスフリーゼのレコードV。第3回は桜花賞馬キョウエイマーチの参戦とそれを破ったビーマイナカヤマの意地。第4回は若きスプリンター・ノボジャックの初重賞制覇劇。
第5回は持ったままで圧勝したサウスヴィグラスの勇姿。第6回ではノボジャックが初の黒船賞2勝馬に。そして昨年の第7回は不良馬場をすいすいと逃げ切ったディバインシルバーのスピード…。それぞれのシーンが水ぬるむ春の季節感と共に、ほころび始めたソメイヨシノの姿と共に思い出される。

 さあ、第8回となる今年の出走馬、まずは例年に負けず豪華メンバーとなったJRAからの遠征馬を紹介していこう。

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シーキングザダイヤ

牡 4歳 鹿毛
森 秀行厩舎
  父 Storm Cat
  母 Seeking the Pearl
母の父 Seeking the Gold

 地方・海外を含めて12戦5勝。4歳だがすでに8ヶ所の競馬場で走っている。適性の合う条件を求めてレースを選択する森調教師ならではの活躍ぶりを見せる超良血馬だ。JRAでのデビュー2戦目から芝の14~16で4連勝。未勝利戦からクロッカスS(OP)、アーリントンC(G3)、NZT3歳S(G2)とぶっこぬいた連勝劇は記憶に新しい。NHKマイルC(GⅠ)は2番人気でキングカメハメハの7着に敗れ、その夏の海外遠征でもジュライC、モーリスドギース賞共に結果はでず、NHKマイルC、モーリスドギース賞(こちらはまだチャンスがあるが)の母仔制覇はならなかった。
 しかしここからの活躍がまた圧巻である。秋シーズンからダートグレード路線に転じてとちぎマロニエC(G3)3着、兵庫ゴールドトロフィー(G3)を勝って芝・ダート両方の重賞勝馬に。
2005年に入って川崎記念・フェブラリーSの両G1で連続2着。ダート路線でのGⅠ制覇が射程圏内に入ってきた。兵庫GTの勝ち方からみても黒船賞の適性は十分と見る。直前のフェブラリーSで連対した馬の参戦は初。そういった意味でもどんなレースを見せるか注目が集まる。

 (血統)
 父ストームキャットはもはや伝説的な高額種牡馬。キャットシーフやタバスコキャット、ジャイアンツコーズウェイなど北米と欧州の双方で活躍馬多数を出し、芝・ダート、スプリンターから中距離馬までカテゴリーを問わない能力を産駒に伝えている。日本ではこれまで目立つ実績を残す産駒があまりいなかったが、ストームキャット直仔は高額のため輸入される絶対数が少ないという事情もある。ちなみに種付け料は約6000万円とも伝えられていて、交配相手にもセレクションがかけられるそうだ。
 母シーキングザパールは前述の通りNHKマイルC、モーリスドギース賞と日仏のG1を優勝。主に芝の短距離で活躍した後、競走生活の最後はアメリカで出走と“国際派”の女傑だった。日本調教馬として初の海外G1制覇となったモーリスドギース賞では後に香港Cなどを制したジムアンドトニック以下を負かしている。シーキングザパールの祖母の兄にあたるのが名種牡馬のリファール。

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ディバインシルバー

牡 7歳 栗毛
和田 正道厩舎
  父 Silver Deputy
  母 Be My Baby
母の父 Ogygian

 ここまで一度も芝を使わず、ダートの短距離専門でグレード4勝というスペシャリスト。もちろん昨年の第7回黒船賞の覇者である。
これまでの成績を簡単にまとめると以下のようになる。

3歳時
2戦目に未勝利(12D)勝ち、休養を挟んで秋から4歳始めにかけて条件戦を3連勝。(10~12D)
4歳時
初OPのコーラルSは3着。5月に栗東Sで初OP勝ち。北海道SC、クラスターC(共にG3)を連続2着で成長ぶりをアピール。シリウスS(G3)は6着も、兵庫GT(G3)では再び2着。
5歳時
ガーネットS(G3)4着、根岸S(G3)5着となかなか重賞に届かない。OP特別の栗東Sは2年連続制覇。北海道SC(G3)3着の後、初コンビの安藤勝巳騎手とクラスターC(G3)で念願の重賞初勝利。
6歳時
黒船賞(G3)で再び安藤勝巳騎手とのコンビ、重賞2勝目。北海道SC(G3)、全日本サラブレッドC(G3)と制し重賞勝ち鞍を4勝に伸ばしている。
7歳
黒船賞が初出走。

 (血統)
 とにかく昨年のレースで見せたスピードは鮮烈だった。ゲートはそれほどでもないが、二の脚で先手を奪うと不良馬場も味方につけてあっさりと押し切り勝ち。ダート短距離のスペシャリストで先行力が武器。父シルヴァーデピュティに母の父オジジアンという血統の字面通りの走りだと言ってもいいだろう。
 カナダ生まれのシルヴァーデピュティはデピュティミニスター系。
上記のストームキャットらと並ぶノーザンダンサーの主要系統に属する。母の父はミスタープロスペクターで、日本に輸入された産駒も大体はダート専門だと考えていい。代表産駒にBCジュブナイルフィリーズ、ケンタッキーオークスのシルヴァービュレットデイ。
日本ではアタゴタイショウと本馬が重賞勝馬となっている。
 

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ノボトゥルー

牡 9歳 鹿毛
森 秀行厩舎
  父 Broad Brush
  母 Nastique
母の父 Naskra

 黒船賞にはなんと4度目の登場だ。過去3度の成績は7,2、2着。2001年の根岸S(G3)・フェブラリーS(G1)連勝を皮切りにダートのグレードレースを6勝(02年とちぎマロニエC、兵庫GT、03年さきたま杯、04年とちぎマロニエC)、他に2着が8度、3着が9度という息の長い活躍を見せている。通算では地方競馬開催で29戦(4勝・11場)、JRA開催で36戦(7勝・4場)、UAE1戦というすごい戦歴。JRAでの獲得賞金が3億20万円で、地方競馬では3億325万円だから合計約6億円の半分強を地方交流で稼いだ計算になる。地方競馬でも、そして高知のファンにもすっかりおなじみの顔となっている。
 最初の黒船賞ではいかにも馬場が合いません、という感じの7着だったが2度目には2着と地方交流への適応力を見せた。自分でレースを作るタイプではないが、昨年の黒船賞では中団後方から外、内、外と武豊騎手の巧みなハンドルさばきで不良馬場を上昇。最後までディバインシルバーに差を詰めた。2度の2着を経て、4度目の出走で黒船賞制覇なるか?

 (血統)
 父ブロードブラッシュはドミノに遡る異色のアメリカ血統。自身はケンタッキーダービー、プリークネスSを共に3着と惜敗しながらも古馬になってサンタアニタHを制覇。産駒にBCクラシックのコンサーンを出して成長力・底力を伝えている。日本での代表産駒もブロードアピール(6歳で初重賞勝利、芝・ダートの短距離で重賞6勝)と本馬(5歳の根岸Sで重賞初勝利)だから、ドミノ系の中でもこれまた異色の遅咲き血統と言える。9歳だが決して侮れないのはこういった背景にもよる。
 母ナスティークはデラウェアHを2度、レディースH、メイトリアークSとG1を4勝した名牝。7代母に遡るとマザーグースというフューチュリティーS勝ち馬(1922年生まれ)が現れるが、このマザーグースの子孫からはBCクラシックのスカイウォーカーやアルマームードが出ていて、このアルマームードからはナタルマ、コスマーらを経てノーザンダンサー、ヘイロー(サンデーサイレンスの父)、デインヒルといったそうそうたる種牡馬群が生まれている。

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マイネルセレクト

牡 6歳 栗毛
中村 均厩舎
  父 フォーティナイナー
  母 ウメノアスコット
母の父 ラツキーソブリン

 前年のJBCスプリント勝馬が黒船賞に参戦。考えてみると今回のJRA出走馬は全て前年にダートグレード競走を制しているのだが、その前年のグレード勝ちにG1が含まれているのはマイネルセレクト1頭だけである。
 マイネルセレクトは6歳馬だがレース出走数は非常に少ない。しかし通算15戦9勝というなんとも素晴らしい戦歴であって、2歳時に4戦2勝、3歳時は10月まで休養で3戦1勝、4歳の夏に復帰するとそこからシリウスS(G3)まで3連勝で一気にダート短距離のトップホースに上り詰める。そして勇躍挑んだJBCスプリント(G1)はサウスヴィグラスを追い詰めながらハナ差の2着だったが、5歳1月のガーネットS(G3)を圧勝。ついにドバイのゴールデンシャヒーン(G1)に駒を進めて5着となった。
 秋シーズンはさきたま杯6着から東京盃(G2)、JBCスプリントを連勝。前年のハナ差負けの雪辱を果たすGⅠ勝ちをマークした。そして6歳の緒戦に選んだのが黒船賞。ここでのシーキンザダイヤらとの対戦は興味深い。休み明け、G1勝ちによる斤量増という条件をはねかえす底力に期待しよう。

 (血統)
 JBCスプリントの勝馬だけあってマイネルセレクトは“速い”。
あえてこう書くのは母系の血統背景がこうだからである。ちょっと聖典風に書いてみようか。

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1957年2月に英国からやってきたマイリーはキューピットを産んだ
キューピットはヤマピット(オークス)とミスマルミチを産みミスマルミチはイットー(高松宮杯、スワンS)を産んだ
イットーはハギノトップレディ(桜花賞、エリザベス女王杯、高松宮杯)とハギノカムイオー(宝塚記念、高松宮杯)を産み
ハギノトップレディはダイイチルビー(安田記念、スプリンターズS)とウメノアスコットを産んだ
そしてウメノアスコットはマイネルセレクト(JBCスプリント)を産んだのである
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 いわゆる華麗なる一族の末裔である。だから“速い”と言う気はないが、そんな馬が一族の名誉に違わぬ活躍を見せるのは競馬の魅力であろう。
 父フォーティナイナーは言わずと知れたアメリカのチャンピオンホース。ミスタープロスペクターの直仔でシャンペンS、フューチュリティS、ハスケル招待H、トラヴァーズSを制覇。ケンタッキーダービー2着、BCクラシックは4着とやや大一番に弱い面も?
代表産駒にエディターズノート(ベルモントS)、また本邦輸入の種牡馬エンドスウィープなど。日本でもユートピア(ダービーグランプリ、南部杯)などを筆頭に活躍馬多数。

キャンペーンなど
ショートムービー「遠回りの春」
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