3月7日(日)に佐賀競馬場で行われる第14回西日本アラブ大賞典に、高知競馬から田中譲二厩舎の2騎が参戦する事になった。ダスティー(牡8歳)とエスケープハッチ(牡4歳)である。
前者は元日の南国王冠・高知市長賞でアローパッション以下に大差をつけての圧勝。また後者は昨年11月の福山・全日本アラブグランプリで4着となって以降、めきめきと潜在能力が開花して4連勝。共に自分でレースを作れる先行タイプの馬ではないが、古豪の意地と新鋭の勢いというそれぞれの魅力を発揮して欲しい。
補欠からの繰り上がりで出走可能となったエスケープハッチは、3歳の早い時期から大きなスケールを感じさせていたがマンペイ記念制覇後は順調さを欠き南国優駿を回避。秋に復帰するも荒鷲賞は4着に敗れ結局一冠に終わった。全日本アラブグランプリでは「前半はもう全然前に進まなかった」(西川敏弘騎手)が、加速がつくと徐々に順位を上げて4着にくい込んだ。恐らくは佐賀競馬場のトラックの方が向いているだろうし、急遽出走が決まったという点を除けば未知の魅力に溢れる存在となろう。
ダスティーにとっては後方ままに終わった昨年5月の福山・アラブ大賞典の雪辱を果たしたいところ。過去には古豪が高知で復活を見せたというタイプのブルーノーズ(3着)、ハッコウマーチ(1着)が好走した舞台でもある。
さて交流重賞と言えば高知競馬最大のレースである黒船賞(G3)の開催まで3週間を切った。JRA出走馬は3月7日に発表される予定だが、それに先駆けて2月29日に地方他地区選定馬、地元高知競馬選定馬が発表されたので紹介しておこう。以下、高知県競馬組合のニュースリリースから転載する。
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馬名 性 年齢
厩舎 所属
タイキシェンロン 牡6
佐々木由則 岩手
ゴールドプルーフ 牡9
今津 勝之 名古屋
マルカセンリョウ 牡6
瀬戸口 悟 名古屋
ホクザンフィールド 牡5
橋本 忠男 兵庫
ベストライナー 牡10
松下 博昭 高知
ウォーターダグ 牡9
大関 吉明 高知
アサヒミネルバ 牡7
大関 吉明 高知
マッケンリーダー 牡11
雑賀 秀介 高知
補欠馬
(1) 岩手・兵庫から欠場馬が出た場合は、ツルマルザムライ、サンキョウフェアーの順で繰り上げる。
(2) 名古屋から欠場馬が出た場合は、マルカバリー、キウィダンスの順で繰り上げる。
(3) 高知から欠場馬が出た場合は、ストロングボス、カルストンストームの順で繰り上げる。
(4) 最終的に出走頭数が少ない場合は、高知所属馬を繰り上げることがある。
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それでは地方他地区の選定4頭について紹介していこう。いずれもグレード勝ち、あるいはその地区で重賞勝ちがあり、トップクラスの成績を残しているメンバーである。成績は3月1日現在で、騎乗予定騎手はまだ発表されていない。
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☆岩手 タイキシェンロン
牡6歳・鹿毛
佐々木由則厩舎
父Fly So Free
母Princesse Niner
母父Forty Niner
通算19戦13勝(内中央3戦0勝)
連対時の馬体重 523~535kg
主な勝ち鞍
2003年・早池峰賞(D重賞1400m)
3歳9月に中央競馬でデビューするも3戦して未勝利。翌年11月に上山競馬場へ移籍するとC6の1300m戦で8馬身差を付ける大勝。初勝利の余勢を駆って9馬身差、4馬身差と圧勝続きの3連勝を飾った。2003年3月からは兵庫に転入してここでも緒戦を小牧太騎手で7馬身差圧勝。その後、上山以来の連勝は10に伸び、JRA条件交流で3着に敗れるまで続いた。岩手には昨年の10月に移籍してA2を2連勝。初オープンの駒ケ岳賞をブライアンズソウルの3着に敗れるも、次走の早池峰賞で重賞初制覇。このレースが1400m戦であった事が黒船賞への期待を高める。桐花賞(2000m)ではトニージェントの2着だが、これは距離を考えれば評価を高める事はあっても下げる事はない。好位2~3番手から抜け出す競馬が勝ちパターン。
ダマスカス系のフライソーフリー産駒だけに前々での競馬が合っているのだろう。フライソーフリーはBCジュブナイル(G1)の勝馬。ドバイWC(G1)のキャプテンスティーヴを送り出している。曾祖母のAvumの娘フィトゥーンが輸入されており、その仔プランタンバンブー・チュンシンバンブーらが活躍している。
[F.No1]
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☆名古屋 ゴールドプルーフ
牡9歳・鹿毛
今津勝之厩舎
父ゴールドレット
母サンウーマン
母父フロリバンダ
通算56戦16勝(内中央2戦1勝)
連対時の馬体重 460~520kg
主な勝ち鞍
2001年全日本サラブレッドカップ(G3)
2003年東海S(G2)
まずは上記の連対時の馬体重を見て欲しい。98年2月に初勝利を挙げた時の馬体重が460キロだったゴールドプルーフが、力を付けていく過程で徐々にその数字を増やしていった証拠がここにある。それにしても晩成型の見事な成長力だ。98年10月に初めて重賞・岐阜金賞(3着)に出走した時は484キロ。99年3月にダートグレード初連対(名古屋大賞典2着)時には494キロまで増えていた。6歳になった01年11月に念願の初グレード制覇を果たした全日本サラブレッドカップでは510キロ!03年には競馬ファンをあっと言わせた9番人気での東海S優勝を挟み、9月のさきたま杯から前走の梅見月杯までを休養。休み明けながら2着したそのレースが520キロだったというわけだ。大器晩成とは正にこの馬の事を言う。父ゴールドレットも名古屋大賞典を勝った地方の名馬であるが、そういった背景からも地方を代表する馬だと言えよう。
ゴールドレットはネアルコ系ボールドアンドブレーヴの産駒。ボールドアンドブレーヴは凱旋門賞やキングジョージを制した一流馬で、ゴールドレット以外にも地方競馬の活躍馬を複数出している。ゴールドプルーフの母系は1953年にアメリカから輸入されたシノブエが祖。代表的な活躍馬はやはりこのゴールドプルーフになるだろう。
[F.No4]
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☆名古屋 マルカセンリョウ
牡6歳・栃栗毛
瀬戸口悟厩舎
父ラムタラ
母マルカアイリス
母父ブレイヴェストローマン
通算41戦19勝(内中央14戦1勝)
連対時の馬体重 520~554kg
主な勝ち鞍
2003年名古屋大賞典(G3)
2004年梅見月杯(D重賞)
昨年の名古屋大賞典で強烈な印象の勝ち星を挙げた名古屋の雄。3歳のいわゆる年明けデビューで中央競馬の新馬戦(折り返し)を勝っている。が、頭角を現したのは02年6月に転入した名古屋競馬場でだ。移籍緒戦のB級条件から初の重賞挑戦となった03年の梅見月杯制覇まで14戦して11勝。その次走にいよいよ名古屋大賞典だったわけだが、さすがにここでは5番人気。中央での格を言えば500万条件に過ぎずある意味妥当な評価なのだろうが、それを跳ね返して見せた馬自身の能力は素晴らしい。その後、ダートグレードではもうひとつだが地元のD重賞で4勝を重ねており、特に直前の梅見月杯5馬身差の圧勝である。
父ラムタラは現役成績4戦4勝。デビュー戦のリステッド(準重賞)以外は英ダービー、キングジョージ、凱旋門賞とすべて格式高いG1。型破りのローテーション(デビューから10ヶ月ぶりの2戦目がダービーだった)や、意外に低いレーティング、およそ44億円で日本へ種牡馬として導入など話題の多い馬だ。
母マルカアイリスは小倉3歳S(G3)の勝馬。ブレイヴェストローマンの肌馬はダート戦での活躍馬を多数輩出していて、トーシンブリザードやニホンピロジュピタが代表格になろうか。マルカアイリスのいとこにはシリウスS(G3)のマコトライデンもいる。
[F.No19]
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☆兵庫 ホクザンフィールド
牡5歳・鹿毛
橋本忠男厩舎
父ライブリマウント
母ホクザンクルール
母父ラシアンルーブル
通算成績19戦12勝(内中央2戦0勝)
連対時の馬体重 440~483kg
主な勝ち鞍
2003年兵庫大賞典(D重賞)
2001年兵庫ジュニアグランプリ(G3)2着
導入されてまだ日の浅い兵庫のサラブレッドだが、その中でも最強の1頭だ。
JRA認定競走をデビュー勝ちすると、兼六園ジュニアカップまで3連勝として臨んだJRA京都のデイリー杯2歳Sは大敗。しかしダートに戻った兵庫ジュニアグランプリでミスイロンデルの2着となって存在感を示した。その後園田ジュニアカップ、笠松・ゴールドジュニアとD重賞を連勝。三歳のクラシック期間は休養を余儀なくされ表舞台から姿を消すものの、復帰後はD重賞に限れば6戦4勝。ダートグレードではまだなかなか結果が出ないが、地元での安定したレースぶりを高知で見せられるか注目である。
父ライブリマウントはなんといっても元祖交流王。母ホクザンクルールの兄ホクザンエンペラーは小倉3歳S(G3)の3着馬。4代母のタジマは府中牝馬Sの勝馬でアストニシメント系だ。
[F.No7]
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3月22日にゲートインを迎える第7回黒船賞。JRAの出走馬や、それぞれの地区の騎乗予定騎手の発表が楽しみだ。また発表になるごとにこちらのコラムで紹介をしていく。

