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記録は愛情の結晶。エスケープハッチ引退式

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1月1日、高知競馬場で、エスケープハッチ(牡8、田中譲二厩舎)の引退式が行われました。
通算成績、83戦54勝。エスケープハッチは、地方競馬歴代最多勝利記録を誇るアラブの名馬です。

アラブ重賞であった高知市長賞を制した昨年の元旦と同じ6番のゼッケンを装着し、主戦の西川敏弘騎手を乗せてコースに現れたエスケープハッチ。栗色の馬体は、南国土佐の陽射しに照らされて美しく輝いていました。胸前の筋肉やお尻の張りが、惚れ惚れするほどたくましかった。

「高知市長賞を3勝(2005年、2006年、2008年)しているように、この時期は調子がいいんよ。脚元と相談していけば現役を続けられるけど、ありがたいことに、ファンの方のおかげで預かってくれる牧場が見つかった。だから元気なうちに・・・と思ってね」

と、田中譲二調教師。引退後は、エスケープハッチの会の支援によって、北海道の牧場で余生を送ることになりました。

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「青草は馬にとって、人間にとっての野菜みたいなもんやから」と、畑を借りて青草を栽培している譲二先生。
譲二先生は、脚元に不安を抱えるエスケープハッチを懸命にケアしてきました。
強い調教をかけられないことの代替手段として、背中に湯たんぽを乗せて血行を促進し、発汗を促すと同時に腸の動き活性化させることをひらめいたそうです。
馬のことを四六時中考えているからこそのひらめきなのではないでしょうか。

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エスケープハッチの話をする譲二先生は、本当に素敵な笑顔を浮かべます。
「ハッチは甘えん坊でねえ」
2歳のハッチが厩舎にやってきてから、愛情をたっぷり注いできました。
「ハッチは俺の息子なんよ」
昨年3月、譲二先生が喉を患って入院した際には、馬房で首を伸ばして、キョロキョロと“お父さん”を探していたエスケープハッチ。
「ハッチがいなくなったら、淋しくなるね。北海道に会いにいかんとね」

引退式では、譲二先生の実の息子さんが、厩務員としてハッチを曳いていました。
少し照れくさそうな表情を浮かべてハッチを曳く息子さんが、「親父だから、ハッチの脚を持たせられたと思います」と言っていたことが思い起こされて、胸が熱くなった元旦の昼下がりでした。

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